企画屋・イベンターの八田雅也さんへのインタビュー後編です。
前編では企画屋・イベンターの仕事をするまでの経緯や、現在の仕事実例を挙げていただきましたが、後編は企画屋・イベンターをやってみたいと思った方に見ていただきたい内容となってます。
また、八田さんが手がける「和こころ」という企画にて、職人から伺った仕事論についても語っていただきました。
企画屋・イベンターの八田雅也さんへのインタビュー後編です。
前編では企画屋・イベンターの仕事をするまでの経緯や、現在の仕事実例を挙げていただきましたが、後編は企画屋・イベンターをやってみたいと思った方に見ていただきたい内容となってます。
また、八田さんが手がける「和こころ」という企画にて、職人から伺った仕事論についても語っていただきました。
目次
企画屋・イベンターが身につけておいた方が良いスキル
──企画をやったり制作する上で大事なスキルとか身につけておいた方がいいものとかってあります?
他に同じようなことをやりたいなって思う人がどこから手をつけたらいいのか、みたいな話ですよね。
正直「特別な能力があるからやってます」とか「資格があるからやってます」というものでは全くなく、必要な国家資格とかはないので、言い方を変えれば誰でもできる仕事なんじゃないのかなと思います。
人とのつながりを大事にするだったりとか、いろんな業界の中に入っていくことが多く全部のスペシャリストにはなりきれないので、業界の中の人に話を聞いて素人的な目線から企画考えたりすると、今まで考えてなかった常識を無視した意見が出るから視点が変わるっていうのは言われます。
なので、視点を切り替える力とかはあった方がいいのかなと思います。
──八田さんの話を聞いていると特別何かをするというより、普段から色々吸収してそれを発想に活かしている感じがしますね。
──飲み会やセミナーなどのコミュニケーションって積極的な方ですか?
コロナ禍で全然行かなくなりましたけど、ご飯を食べながら話が決まることとか多かったりしますよね。
会議室でスーツ着てかしこまって「どういう企画をされますか」とか、そういうのはあんまりないです。
話をしていく中で「今、こんなところ悩みなんだよね」みたいな話を聞きながら、「そういう悩みならこの人とつなげたらこんな面白いことできるかもですね」みたいな話をして、そこから本格的に考えようっていう流れが多いですね。
企業さんに呼ばれてかしこまったオフィスでミーティングもやりますけど、苦手ですね。
企画屋・イベンターとして具体的な仕事のフロー
──具体的に言えることじゃないのかもしれないんですけど、仕事の量について。例えば月間で何本の仕事をしてますか?
雇われで仕事してた時って始めと終わりがすごいはっきりするじゃないですか。そこはあんまりなくて。
実際動かしているって言ったら、一人で月7本とかかな。でも動かしてはいるけれど今月は動かなかったみたいな仕事もあったりするので、終わりがないというか。
終わりはなんとなくは決まってますけど、そこまで来たら次何やろう次何やろうってずっと続いていく感じのことが多かったり。
一般的な仕事のやり方っていうと、どれぐらいやってるのかといったらよくわかんないですね。
──1日の過ごし方とか、そういうのも自由ですよね。
自由ですね。
仕事にかこつけてあちこち旅行に行ったりとか、行った先々でちょっと後泊してうろうろしてみたりとか。
地元の人たちと一緒に楽しむ時間をちゃんと取ることで、それが次の企画にまた活きてくるんです。
そこだけ聞いたらすごく聞こえは良さげですけどね。
毎日休みちゃっ毎日休みですけど、毎日仕事ちゃっ毎日仕事です。
八田さんにとっての仕事選びの基準
──仕事選ぶ時に基準にしてることってありますか?
何をするかというより誰とするかが、一番重要視するポイントです。
──KAZOOのホームページにも最初に書いてますよね。
お金をいっぱいもらえるからっていうのももちろん嬉しいんですよ。やりたいんですけど、この人と一緒に何かしたいなっていうのが一番根底にある仕事しか受けないというのは決めていることですかね。
──そこを振り切るって簡単なようで難しくないですか?
結果的に見てですけど、この人と一緒に何かしたいって、要はもっと言うと「この人と一緒だったらコケてもいいや」ということ。
こちら側だけじゃなくて向こうにもそう思ってもらえるような関係ができて一緒にやると、失敗してもそれが学びになるじゃないですか。
ビジネスビジネスした感じで担当者と一緒に仕事しますみたいな感じだと、失敗したら切られちゃうんですよね。
それってもちろん力不足だった自分のせいではあるんですけど、すごくもったいないなと思っていて。
やって、失敗して、そこからの学びを次に活かせないのって悲しいじゃないですか。
最初はお試しで簡単な企画かもしれないですけど、そこから次の深い仕事になっていく時にしっかり絆ができている中で深い仕事ができていくと、お互いにとってきっと満足いく形っていうのができてくるんじゃないのかなと思います。
企画屋・イベンターが向いている人
──企画屋やイベンター、コンサルタントを含めた仕事って、興味を持っている人がいっぱいいると思うんですけど、どういう人が向いていると思いますか?
自分でもよく分かってないんですけど、臨機応変っていうんですかね。
あり得ないことが結構起きたりするので、あり得ないことを楽しめる感覚っていうんですか。
きっちりきっちり決まったことを毎日やりたいとかっていうタイプの人というより、毎回関わる人が違えば状況が変わるので反応も変わるし、それに対してどう合わせていくかっていう何が起きるか分からない感覚を楽しめる人は向いてるんじゃないですかね。
あとは儲けるよりも楽しいが好きな人。儲けることもお金も大事なんだけれども、最優先は楽しい方がいいですっていう人は向いているんじゃないかな。
意外と大変なのに儲からないとかありますから。
八田さんが企画屋としての仕事で大切にしていること
──八田さんが企画屋・イベンターの仕事をやる上で、モットーや大切にしていることってどんなことですか?
答えはやりたい人の中にあるみたいな感覚ですかね。
こちら側で勝手に考えて押しつけというより、寄り添うって言うんですかね。
伝えたいメッセージだったり実現したいことだったりっていうのは、答えって外に求めがちだと思うんですけど答えはその人の中にあるから、それをどう引き出すかをすごく大事にしてます。
【前編の続き】八田さんの企画「和こころ」について
──前編で触れた「和こころ」という企画、八田イズムを感じたんですが、改めてどんな企画なのかお話いただけますか?
たまたまご縁があってお伺いした手書き友禅の「染匠(せんしょう)」がいらっしゃいまして。
ステレオタイプの感覚しかなかったし、京都生まれ京都育ちでしたけど職人さんとかは全然接点なかったんで、「後継者いないの大変ですよね」って聞いたんですよ。
そしたら「大変なことあるか!」って怒られたんですね。
何で怒るんですかと聞いたところ、「着物職人が一人前になるまでに、10代から丁稚で働いて下積み修業して職人と呼べるのは30代・40代、一人前って呼ばれるのが50代・60代になってから。それだけの期間をこれから弟子が独立するまで面倒見れるか?しかも着物って今どんどん需要が下がってきてる。この先着物の需要があるかないか分からへんのに、弟子を取るようなリスキーなことはできん。」と。
「じゃあこのままなくなっちゃうんですか?」って聞いたんですけど、ここがポイントだと思って。
「ワシにできることは、今やる1着1着の仕事を手を抜かずに全力を出して作ること。それをするとどうなるか分かるか?お客さんが喜んでくれはんねん。お客さんが喜んでくれたらどうする?長いこと大事にしてくれはるやろ。大事にされるということは後世まで残るんや。」
「後世の誰か、どっかの誰かが絶対に、昭和平成令和の着物職人の仕事に興味を持ってくれる人が絶対出てくる。その人が昔の着物を引っ張り出してそれを分析してくれるんや。1針1針の中に思いを込めて作っていればその思いを後世の人が引き継いでくれるんや。」
「モノを通して技術や想いを引き継ぐことってできるはず。そのために自分が今良い仕事をすれば後世に残りやすくなる。残りやすくなったら引っ張り出される可能性が上がるやろ。そしたら、今ワシが引き継いできたものっていうのを時を超えてどこかの誰か、興味を持った誰かがきっと引き継いでくれるはずや。
「だから今ワシができるのは後継者を育てることじゃない。自分ができる限りの仕事っていうのを良い仕事をすることが引き継ぐということなんや。」
という話をされたんですね。なんちゅう格好いい生き方してるんだ思って。
この話、自分の中だけでおさめたらあかん気がするなっていうのがきっかけで、どこかにまとめるかと。
ライティングもほとんどしたことなかったんですけど、録音してたのを書き起こししてサイトにまとめたのが「和こころ」の始まりです。
そこからは職人さんから職人さんを紹介してもらう笑っていいとも方式、お友達紹介方式で聞いていったら、賛同してくれる方がたくさん現れて。着物だけじゃなくていろんな業界の、普段だったら取材NGみたいな人たちにつながっていきました。
企画師・イベンターの仕事の魅力
──最後の質問になるんですが、企画師・イベンターという仕事の魅力ってなんでしょうか?
一番の魅力は、いろんな人とフラットに繋がれるところですかね。
業界とか業種とか、もっと言ったら社会的地位とかも関係なく、人と人としてちゃんと繋がれるんです。
この仕事の仕方だからだとは思うんですけど、みんな何かの専門家なんですよね。
自分の知らない世界を皆さんご存知ですし、年上とか年下とか関係なく話を聞くと面白いですよね。
それが次の自分のつながりにも活きてくるし仕事にも活きてくるしというのが、相乗効果でどんどんどんどん大きくなっていっている感じ。その中にいるのが楽しいですね
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