鍼灸師の技術を生かして施術だけでなくコンサル業も行う三好秀明さんの働き方についてインタビューしました。
目次
鍼灸師について
──まず鍼灸師という職業があまり馴染みのない方もいらっしゃるかもしれないのでどういうお仕事なのか教えてください。
鍼とお灸を使って体を治すっていう職業になるんですけど、僕の場合は一般的な鍼灸師よりももう少し幅の広い働き方をしています。
鍼灸の資格の中で使える全てのもの、例えばマッサージのようなものだったりエステ要素の入ったものだったりとか。
いろんな施術方法を使ってトータルヘルスケアやアンチエイジングなどを提供しています。
──アンチエイジングっていうのは結構なキーワードになってるんですか?
今メインでやってるのは美容ですが、健康あってこその美容だと思ってるので、表面的な美容っていうよりも健康面なども含めてトータル的にやってます。
元々トレーナーや接骨院での治療をガッツリやってたんで、体を見ながら体の内面から変えていきながら外面的な美容のアンチエイジングだったりとか、総合的に見ています。
今の職業に至るまでの経緯
──鍼灸師を選んだ最初のきっかけはなんだったんですか?
高校の時に進路どうしようかなって思っていた頃、サッカー部だったんですけど、そのサッカー部にトレーナーが付いてたんですよ。
サッカーのプロは無理だから、トレーナーとしてサポートしたいなっていうところからそっち方面を考え始めました。
また、誰かに雇われて働くっていうのが想像できなかったんですよ。だからまず、自分が社長というか個人でできるっていうのと、資格があればそこそこお金にも困らないかなっていうイメージ。あとは楽しそうだな、って思って。
物件とか見るのも好きだったんで一級建築士とか、家具職人とか、あと不動産。先ほど挙げたトレーナー、理学療法士、鍼灸師などの道を選択肢として考えてました。
その中でなぜ鍼灸師を選んだかというと、鍼1本を使って、それこそやりたかったトレーナーから治療院内での治療、あとは美容という具合に、鍼灸師の資格でこれだけ幅広くできる職業であること。
いろんな場所で鍼灸を広めたりとか楽しんでもらえる場所を作っていけるんじゃないかなって直感的に思ったことも理由の一つです。
──鍼の世界に入ったのは具体的にはどういうことからスタートしたんですか?
高校を卒業して鍼灸の専門学校に入りました。
鍼って3年間授業を受けて単位とると国家試験を受けられるので、卒業後に国家試験を受けて鍼灸師の資格を取りました。
鍼灸師の資格を先に取ったんですけど、働いたのは鍼灸接骨院で、鍼灸よりも接骨院メインだったんですよ。
整形外科疾患とか、骨折・捻挫・打撲・挫傷とか。アスリートのトレーナーみたいな感じでそういう現場をこなしてました。
接骨院を選んだのは、西洋医学メインで勉強したかったのもあるんですよ。
東洋医学って知らない人がほとんどだと思うんですけど、西洋医学みたいに答えがはっきりしてないというか。
西洋医学で勉強をきっちりして、患者さんにもちゃんと伝えられる状態から、プラスアルファで東洋医学の情報を加えたり治療もやっていけたらという思いから、接骨院メインのところに入りましたね。
接骨院の資格も取っておこうかなと思い、働きながら接骨院の「柔道整復師」っていう国家資格も取りました。
──その頃は全然美容鍼という世界ではないんですね
学生の頃から美容鍼の研究をしていて、卒論も美容鍼なんですよ。
何で最初から美容鍼の仕事に行かなかったかっていうと、美容だけやってても何かすごく浅い美容の施術しかできないなって思っちゃったんですよ。鍼灸業界の美容鍼とか見てても腑に落ちないところがすごくあったので。
美容っていっても体が基本なので、体の治療とか状態とか症状とかいろんなことができれば、それにプラスアルファ美容の知識をつけるだけで差別化できそうだなっていうのが感覚的にありました。
Acu-pa鍼灸院を立ち上げてから
──接骨院で働いてた時と独立した今との違いはどう感じてますか?
好きなことを軸にやってるんで大変さも含めて楽しいと感じますし、仕事へのテンションは全然違います。
独立していいなって一番思ったことは、集客とかも含めて自分で発信するなどやっていかないといけないから、自ずといろんな人に出会う場に行ったりすることがめちゃくちゃ楽しいですね。
遊んでいると同時に仕事になっていくというか。年上でも年下でもフランクな付き合いをするようにしていて、その付き合いの中からいろんな形で仕事の幅が広くなっていってます。
──例えば、1日こういう感じで働いてます、といった仕事のスケジュールが決まってたりしますか?
現在は大阪と東京の二拠点で生活をしています。
東京の恵比寿にAcu-pa鍼灸院があって、こちらで金土日だけやってます。
それ以外は自分の技術を使ってもらえる治療院だったりとか、僕の技術を使って治療院をオープンしたいっていうオーナーさんがいるんですけど、そういう方たちのところにコンサルや顧問という形で入ってます。
東京に金土日いるので、それ以外の月曜日から木曜日は大阪でコンサルや顧問業をやりながら、実際にそこで治療もやったりもしてます。
1人あたりの施術時間はだいたい1時間から2時間で、準備とかも含めたら2時間半ぐらいかけてます。患者さんは1日に4,5人とか入るときもありますね。
芸能関係の人とかも増えてきたりした、時間がバラバラな業界なので、患者さんのご要望に応じて早朝や深夜に対応することもあります。
ずーっと働くのは無理なんで、その辺は自分でバランスとってます。
──そういう働き方をしていると、体がすごい疲れる仕事だったりはしませんか?
時間は拘束されるんでそういう意味では体力的にきついかなっていうときもありますけど、力仕事っていうよりも頭が疲れちゃいますね。体力的には元気なんですよ。頭が疲れて寝落ちすることはあります。
今後も施術は絶対やっていきたいんですよ。ただ、教える側もやっていきたいと考えてます。教える側になればスケジュールのタイトさもちょっとマシになると思ってます。
鍼灸師の仕事をする上で大切にしていること
──仕事をする上で大事にしていることとかモットーとかってありますか?
まず絶対楽しみながらやること。ワクワク感はめっちゃ大事なんですよね。
今後は国家資格を持ってない人たちが治療院というハコを持たなくてもマッサージ屋さんとかリラクゼーションとかできるようにしたくて。
僕はできるだけエビデンスを元に技術を作ってるんで、それを知識が足りてない人に提供して「遊び×治療」じゃないですけど、そういうイメージのコンセプトのイベントを考えたりしてます。
もう一つは異業種の人たちと積極的に仕事をするということ。
普通の鍼灸師を考えてる人からすると僕の働き方って異色だと思うんですよ。そもそもコンサルとかもそんなにする人いないし顧問に入ってる人もいないだろうし。
何でそういう形をとってるかっていうと、Acu-pa鍼灸院を始めてから7年になるんですけど、外への発信力とかPR力っていうのが僕はすごい下手だなって感じたんですよ。技術とか知識は自信あるんですけど。
だからそういう僕に足りてないところも異業種の方たちと一緒にやっていくことで、足りてないところを補いながらみんなで一緒にやっていける楽しさってのはすごくありますね。
鍼灸師の仕事を人に勧めるとしたら
──三好さんは現在の仕事のどういうところに満足感を得たりやりがいとか感じられますか?
高校まで勉強せずに運動ばっかりやってきたのもあって、なれるなら医者になれたらよかったんですけど急に勉強して医者ってのも僕には難しかったので、医者以外の資格で体に鍼を刺して治療できる
っていうこと自体がすごいワクワク感がありました。
お客さんの満足度を実際に声として聞いたときにすごくやっぱり楽しいし、治療をする際に自分の考えた期間だったり流れで良くなっていくこともすごく楽しい感じます。
自分で治療院をやることで、経営者の方とか経営者じゃなくても異業種のいろんな方との出会いが増えるっていうところも楽しいです。
あとは美容鍼業界っていうところに違和感を感じてたところもあるんで、僕なりにですけどもっと良くしていきたいっていう気持ちがあり、それに共感してくれる人がいると楽しく感じますよね。
──どういう人が鍼灸師に向いてると思いますか?
シンプルに、経営者っていうよりも技術者。
どこまで追求できるかっていう、「もっともっと」っていう意識がある人の方が治療をする上ではすごい伸びます。多分それがないと楽しくないですね。
技術の追求ができない人は多分儲けに走っちゃうので。
儲けるだけだったら、別に鍼灸で稼いでもいいですけど、もっと稼げる職業はあるんじゃないかなと思っちゃうんですよね。
三好さんが今後やりたいこと
──今後の三好さんの展望があれば聞いてみたいんですけど
元々僕、海外行きたかったんですよ。海外で鍼灸治療やってみたかったんですけど、英語をしゃべれないんですよね。
なので「とりあえず東京行くか」っていう感じで来てみて、ひとつ自分の治療院を持てたので、周りの界隈の人を一緒に絡めながら自分の技術を使ってくれるところの数を増やしたりだったり。その数を増やした中で、派遣ビジネスだったりとか福利厚生事業であったりに展開できたらなと。
元々いきたいと思っていた海外にも展開したくて、アメリカのカリフォルニア、特にシリコンバレーに行きたいんですよね。
接骨院時代には気づいてなかったんですが、鍼灸治療だけにしてから肩こりってこんなに悩んでいる人が多いんだなって思うようになりました。
肩こりと言っても、ちょっとしたマッサージで治る人じゃないですよ。呼吸が苦しくなったりとか、息切れ・動悸・頭痛など肩こりが気になって日常生活がストレスになるような人。
そういう方たちをちゃんと治療していこうって思うと、めちゃめちゃ鍼っていいなと思って。
デスクワーカーの多いビジネス街の人たちに向けて、目の疲れ・頭の疲れ・肩こり。美容とは関係ないですけど、どれだけ海外に需要あるのかなとかチャレンジしてみたいです。
三好さんが思う鍼灸師の仕事の魅力
──最後に、鍼灸師の仕事の魅力について教えてください。
僕は医者になれなかったんで、医者以外で体の中に鍼を刺しながら治療できるっていうのは楽しいというか。
体に鍼を刺すと、その鍼から伝わってくる情報ってめちゃくちゃ多いんです。
例えば刺してもスッカスカの場所もあれば、筋肉が鍼にまとわりつくような硬い感じもあるし、筋肉なのにカッチカチの石みたいになってるところもあるし。
治療をしながらそれを感じ取れるのが楽しいですね。
それと、お客さんからの良くなったっていう声、「気持ちよかった」だけじゃ僕は満足できないんですよ。それだとマッサージ屋さんと一緒なんで。
ちゃんとこういう症状が治って日常生活が元の状態に戻りましたっていう声とか、ちょっと歳をとって見えてたのが若くなったとか。そういう言葉を直接だったり、その本人以外の方から変わったねって言われる声を間接的に聞くと、めちゃくちゃやっぱり嬉しいですね。